町小・中学校学力調査結果報告
新学力調査10年目



 蔵王町教育委員会では、町内小・中学生の学力の実態を把握するための学力調査を、今年度も4月に実施しました。調査は、小学校2~5年生(国・算)、中学校1・2年生(国・社・数・理・英)を対象とし、「基礎となる力(各教科で必ず身に付けてほしい大事なことがら)」「活用する力(基礎となる力を使って、日常生活のさまざまな問題を解決する力)」を分析できる設問を盛り込んだ内容となっています。同時に、小学校5・6年生と中学校3年生には、起床・就寝時刻やテレビ・動画・ゲームなどの利用状況、家庭学習の時間など家庭生活に関するアンケートを行いました。


小学校の現状と課題

 学力調査の観点には「基礎となる力」「活用する力」の2つがあります。国語は、全体的な正答率と全国平均正答率との差はあまり見られませんでしたが、「活用する力」に差がある学年が見られました。全体の傾向として、経験したことを活かして答える問題の正答率が高い反面、提示された条件に基づいて答える問題の正答率が低い傾向にありました。算数の全体的な正答率は、全学年において全国平均正答率と同程度でしたが、「活用する力」が、全国平均正答率より5~10ポイント程度下回っている学年も見られました。全体として、思考力・判断力・表現力を問う問題の正答率が低かったです。
 教科別の詳しい結果および分析は次のとおりです。


小学校 国語の考察

 国語では、3年生は全体的な正答率が、全国平均正答率とほぼ同程度となりました。一方、4年生は「基礎となる力」が、8ポイント下回り、2年生は「活用する力」が9ポイント下回る結果となりました。「基礎となる力」では、「物語文や説明文の内容を読み取ること(2年)」「主語と述語の関係、ローマ字を書くなど言葉に関する事項(4年)」などが低く、前年度までに学習した内容を定着させる必要があります。「活用する力」では、「文章の中の重要な語を選び出すこと(2年)」「説明文の要約(4・5年)」などの正答率が低い結果となりました。様々な情報があふれる現代において、文章を要約する力は重要なスキルとも言えます。いくつかの情報の関係を正確に読み取り、相手に伝わるように、自分の考えを表現する力を高めていく必要があります。
 国語は、全ての学習の基礎となる教科です。読書活動の奨励によって言語についての理解を深め、様々な場面で場に応じた言葉を選択し、自分の考えを表現することなど、言語活動の充実を図り、国語力を高めていく必要があります。各学校では、豊かな言語環境の整備と言語力の基盤づくりを進めていきます。
 ご家庭では、読書を楽しむ時間を設けたり、学校生活・家庭生活を話題とした会話を楽しんだりすることが国語の力の向上につながります。ぜひ、各家庭で、お子さんと一緒に取り組んでいただきたいと思います。


小学校 算数の考察
 算数では、「基礎となる力」は、全学年において全国平均正答率と同程度となり、おおむね身に付いていると考えられます。一方、「活用する力」に関しては、3・5年生は全国平均正答率と同程度でしたが、2年生の正答率が全国平均正答率より13ポイント、4年生が5.8ポイント下回っており、改善していかなければならない状況です。内容としては、「示された減法の式と挿絵から求差の文章問題を作る(2年)」、「あまりを切り上げて処理する問題について、その理由を説明する(4年)」問題で課題が見られました。
 「活用する力」を問われる問題では、質問の意図を正しく捉え、既習事項を生かして立式したり、解決の過程を言葉や式で表したりする力が必要となります。今回の結果を踏まえ、学習したことを日常生活の中で活用するよさに気付かせ、活用意欲を高めたり、普段の授業において、既習事項のどの知識・技能を活用すれば解けるのかを考え説明させたりするなどし、思考力・判断力・表現力の育成に努めていきたいと考えています。
 また、算数科は他教科に比べ内容の系統性や連続性が強く、学年が上がるにつれて理解や習熟の程度の差が大きくなる傾向が見られます。そのため、基礎・基本の内容を習熟する時間の設定や家庭学習の習慣化を図るとともに、個に応じた学習方法の工夫を行い、学習内容の理解と定着を確実なものにしていけるよう指導していきます。

全国平均正答率を100としたときの到達率


町立小学校5校の学力向上への取り組み
小学校共通
  • ●電子黒板やタブレットなどのICT(情報通信技術)を活用した授業の推進
  • ●早期英語教育「ざおう英語活動」の実施(英語専科、ALT、学級担任による複数体制での授業の実施)
  • ●体験学習を重視した学習活動
  • ●学習支援員、特別教育支援員との連携による学習支援
  • ●朝読書の実施
  • ●図書ボランティアによる読み聞かせや、学校図書支援員による読書環境の整備
  • ●「ございん学習室」の活用
  • ●教育相談の実施による保護者との連携強化
  • ●家庭学習の習慣化(町教育委員会作成「学習の手引き」や、家庭学習カードの使用、ノーゲームデーの設定)
円田小学校
  • ●算数科校内研究「『分かる喜び』『学ぶ楽しさ』を味わえる授業づくり」への取組
  • ●主体的な態度を育てる「伝え合い」「学び合い」を取り入れた指導の充実
  • ●ペア、グループ学習を取り入れた自力解決・問題解決型学習の充実
  • ●表現力の向上を育てる環境の整備(算数コーナー、ICTの活用、「表現のスキル」等)
  • ●朝読書や読み聞かせ、多読賞の表彰、読書カードの活用などによる読書習慣の奨励

平沢小学校

  • ●国語科校内研究「自ら考え、意欲的に表現する児童の育成」(学び合いを意識した授業づくり)
  • ●学習の基礎・基本の定着のための、放課後の学習時間「だるまんタイム」の活用
  • ●コミュニケーション能力の伸長を目指した、集会活動、学校行事等における表現活動の推進
  • ●児童が進んで課題に向き合い、学びを深めていくための指導の工夫

永野小学校

  • ●教員の指導力向上(算数科校内研究「自力解決の喜びを感じる授業の在り方」)
  • ●学びのコーナーの設置(教室外に手本となる児童のノートを掲示)
  • ●「ざおうさまタイム」の活用(朝の時間を利用し、各学級の実態に応じて内容を工夫)
  • ●「永野小スタンダード」の活用による学習習慣の徹底

宮小学校

  • ●国語科校内研究「主体的に学び、自分の思いや考えをいきいきと伝え合う児童の育成」
  • ●児童が自分の考えを交流させる学び合いの場の設定
  • ●学習の基礎・基本の定着に向けた学習の時間「学びの時間」の活用
  • ●「宮小学校学習ルール」の徹底(あいさつ、学習準備、発表等の学習習慣の定着)

遠刈田小学校

  • ●校内研究「主体的に学び、自分の考えを表現できる児童の育成~ICT機器を活用した授業づくりを通して~」
  • ●学習と校務のDX化推進
  • ●基礎・基本の時間の充実(既習事項の定着を目指した朝のパワーアップタイムの実施)
  • ●読書活動の推進(図書コーナーの設置や読書週間の実施)
  • ●書く活動の日常化(行事のめあてや振り返りの記入、授業感想などへの取り組み)


中学校の現状と課題
 1年生では、全体的な正答率が英語は5.2ポイント全国平均正答率を上回っています。カテゴリー別に見ると、「基礎となる力」では4ポイント「活用する力」では10.3ポイント全国平均を上回り、「聞く」「読む」「書く」の領域いずれも8割前後の正答率となっていました。この結果から、ざおう英語活動の成果が確実に現れているといえます。また数学は全体的な正答率が全国平均を1.3ポイント下回りましたが目標値には達しており、「基礎となる力」では全国平均との大きな差はありませんでした。一方、国語では5.1ポイント、社会では8.3ポイント、理科では3.8ポイント全国平均を下回りました。特に国語と理科の「活用する力」、社会の「基礎となる力」と「活用する力」では、全国平均より5ポイント以上下回っており、指導の工夫・改善を進めていく必要があると考えます。
 2年生では、「基礎となる力」「活用する力」のいずれも全国平均との差は5ポイント以内となっています。一方、社会、理科、英語ではいずれも全国平均を5ポイント以上下回っており、特に「基礎となる力」のポイントで差が大きくなっています。中でも英語では、昨年度の好結果から転じ、「基礎となる力」で9.1ポイント、「活用する力」で7ポイント全国平均を下回る結果となりました。

 以上の結果を踏まえ、中学校では以下のことに留意し、授業改善や学習支援を進めていきます。
 英語に関しては、1年時には「話す」「聞く」活動において小学校における「ざおう英語活動」の成果が反映されていますが、学年が上がるにつれ、「読む」「書く」学習が増え、苦手意識を持つ生徒が出てくることが予想されます。小学校から中学校の学習へスムーズに移行できるよう、小・中学校間での授業実践交流などの連携を充実させることが重要です。小・中それぞれの効果的な実践を取り入れ、改善を図ることで、児童・生徒が「読む」「聞く」「話す」「書く」能力をバランスよく身に付ける授業づくりを推進していきます。
 国語、数学、理科、社会については、小学校での既習事項をもとに、より発展的な内容を学習できるよう支援します。授業の中に、既習事項の復習や補充・深化の時間を取り入れるとともに、特に理科・社会については、生徒が実体験や疑似体験できる場を設けるよう工夫し、その学びがより深い知識として定着するような学習支援を行っていきます。
 また全教科で共通して見られる課題は、「思考・判断・表現」の力と「主体的に学習に取り組む態度」を育成していく必要がある点です。「思考・判断・表現」の力を育てるためには、基礎的な知識の定着を基盤に、教科内の発展課題や、実生活に即した課題に取り組む場面を多く設定することが重要です。それは「主体的に学習に取り組む態度」の育成にもつながります。それに加えて課題解決のために協働的な学習やICTの活用も進めていきます。
 子供たちが目まぐるしく変化する現代の社会で生きていくために必要な、主体的に考え、判断し、表現する力の育成を、小・中学校連携して推進してまいります。ご家庭でも子供たちへの励ましのお声掛けをお願いします。


全国平均正答率を100としたときの到達率




町立中学校3校の学力向上への取り組み

中学校共通
  • ●電子黒板やタブレット等ICTを活用した授業の展開・推進
  • ●数学科・英語科におけるTT(チームティーチング)指導および個別支援
  • ●特別支援教育支援員の配置による学級支援
  • ●各種検定(漢字検定・数学検定・英語検定)の実施
  • ●学校図書支援員による教科学習に役立つ図書環境の整備
  • ●毎日の朝読書の実施
  • ●長期休暇中における自主学習教室の開放と学習支援
円田中学校
  • ●生徒が「わかる・できる」を実感し、主体的に学びに向かう授業づくり
  • ●「子供の学びを支援する5つの提言」に基づいた授業づくり
  • ●学習効果を高めるためのICT機器を活用した授業や家庭学習の工夫
  • ●円中リピートタイム(「帰りの会」前の10分間で行うプリント学習)の実施
  • ●担任を中心とした学年担当による家庭学習のチェックと学習方法のアドバイス

宮中学校

  • ●生徒自身による振り返り活動の充実および生徒が主語の授業づくり
  • ●学びの機会を保障するための授業のリモート配信
  • ●生徒を対象にした授業評価アンケートの実施とアンケート結果を活かした授業改善
  • ●QUテストによる生徒の実態把握と生徒指導・学習指導の推進
  • ●学習委員会の活動(生徒や教員に勉強の仕方をインタビュー、考査前の予想問題作成)を通した学習に向かう雰囲気の醸成

遠刈田中学校

  • ●「協働的な学習活動」と「ICTの活用」を重視した授業づくりの推進
  • ●生徒の興味・関心に応じて課題を工夫する探究的な学習の設定
  • ●授業づくり強化期間(研究授業)における学年職員グループによる事前・事後授業検討会の実施
  • ●帰りの会後10分間のミニ学習会や自主学習ノートを活用した、基礎・基本の定着と家庭学習の意欲喚起
  • ●定期テスト後の学び直し授業の実施
  • ●学校環境適用尺度「アセス」による生徒の実態把握と、それを生かした生徒支援および学習集団づくり


おおむね良好だった問題の内容
※正答率が高く、全国平均正答率より上回っている、もしくは全国平均正答率との隔たりが小さいもの。
国 語

1年

2年

●漢字を読む
●文章・語句に関する事項

●漢字を書く
●説明的な文章の内容を読み取る
●文学的な文章の内容を読み取る

社 会

1年

2年

●日本の政治

●世界の姿
●日本の姿
●縄文時代~古墳時代

数 学

1年

2年

●小数・分数の計算
●整数の性質
●平均・場合の数

●平面図形
●正負の数
●文字式

理 科

1年

2年

●植物のつくりとはたらき
●てこのはたらき

●動物の分類

英 語

1年

2年

●アルファベットの書き(聞く)
●英文の読み取り(聞く)
●英文の完成
●英作文

●リスニング(さまざまな英文の読み取り)



課題とされた問題の内容
※正答率が低く、全国平均正答率との隔たりが大きいもの。または正答率が他の問題と比較して低いもの。
国 語

1年

2年

●説明的な文章の内容を読み取る
●文章を書く

●調べたことをスピーチする
●文章を書く

社 会

1年

2年

●明治時代~大正時代
●日本国憲法
●縄文時代~平安時代
●安土桃山時代~江戸時代

●世界各地の人々の生活と環境
●飛鳥時代~平安時代
●世界の諸地域

数 学

1年

2年

●百分率
●いろいろなグラフの読み取り
●文字と式

●データの分析の傾向
●空間図形

理 科

1年

2年

●動物のからだのつくりとはたらき
●水よう液の性質
●電気の利用

●地層
●物質の状態変化
●地震
●火山

英 語

1年

2年

●日常会話の理解(聞く)

●語形・語法の知識・理解
●英作文(場面・情報・3文以上)
●さまざまな英文の読み取り

 

家庭でもできること

生活アンケートから
 町内小学校5・6年生(153名)と中学校3年生(62名)を対象に、今年度の6月に「生活に関するアンケート」を行いました。

①メディアに接する時間
 テレビ・動画、ゲーム、SNSに接する時間は小・中学生のいずれも1~2時間が最も多くなりました。小学生はテレビ・動画・ゲームを見る児童が多い一方で、中学生はSNSを使用している生徒が多いようです。中には、それぞれのメディアに接する時間が4時間以上の人も見られました。各メディアを安全に使用している人が大半ですが、「使用していて嫌な気持ちになった」・「困ったことがあった」と回答した人も10%ほどいました。メディアに接するのは余暇を過ごすのに手軽で楽しいものです。しかし、夢中になる余り、あっという間に時間が過ぎていたり、SNS上のトラブルや個人情報の流出など様々な問題に巻き込まれたりする恐れもあります。WHO(世界保健機関)においては、ゲーム障害が精神疾患の1つとして位置付けられました。ぜひご家庭で、お子さんと一緒にルールや普段のメディアへの接し方、使用時間を見直す機会を設けてみてください。

②就寝時間と睡眠時間
 小学生は22時前、中学生は22時から24時の間に就寝している人が多いようです。中学生では、学年が上がるにつれて就寝時間が遅くなっていく様子が伺えます。また、小学生で、睡眠時間が9時間以下である児童が72%、中学生で睡眠時間が8時間以下である生徒が75%いました。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、「小学生は9~12時間、中学・高校生は8~10時間を参考に睡眠時間を確保する」とされています。睡眠には、心身の疲れを回復したり、学習したことを脳に定着させたり整理したりする効果もあると言われています。毎日元気に活動するためにも、十分な睡眠時間を確保できるようご家庭でもお声掛けをお願いします。

③自由時間の使い方
 蔵王町では、家庭での過ごし方を見直し、テレビやゲームなどに費やす時間を減らすきっかけとなるようにと、「ノーメディアデー」や「ノー宿題デー」などを実施している学校もあります。また、中学校では、生徒が自由に使える時間を増やし、何をするかを自ら決められるようにという思いから、部活動の在り方を見直してきました。子供たちが興味を持ったことにじっくりと取り組むことで「主体的に取り組む力」や「自分で考え、判断できる力」が育つと考えます。メディア利用や就寝時間などと併せて自由時間をどうしているか、また、どう過ごしたいのかを、子供たちと考えながら学校でも指導していきます。ご家族でもぜひ話題にしていただければと思います。


問い合わせ先/各小中学校または、町教育委員会教育総務課 TEL33-3008

 

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