町小・中学校学力調査結果報告
   
新学力調査7年目


 蔵王町教育委員会では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、昨年度は、例年実施してきた学力調査を行うことができませんでした。学校の教育活動自体も、6月からのスタートとなり、さまざまな制限がある中でできることを模索しながら、学習のやり残しがないように各校進めてまいりました。今年度、現在の町内小・中学生の学力の実態を把握するための学力調査を、5月に実施しました。調査は、小学校2〜5年生(国・算)、中学校1年生(国・社・数・理)、中学校2年生(国・社・数・理・英)を対象とし、「基礎となる力(各教科で必ず身に付けてほしい大事なことがら)」や「活用する力(基礎の力を使って、日常生活のさまざまな問題を解決する力)」を分析できる設問を盛り込んだ内容となっています。同時に、小学校5・6年生と中学校3年生には、起床・就寝時刻やテレビ・ゲーム・インターネットの利用状況などの家庭生活に関するアンケートを行いました。

小学校の現状と課題
 調査の観点には「基礎となる力」と「活用する力」の二つがあります。「基礎となる力」は、国語では、全国平均との差はあまり見られませんでしたが、「活用する力」については、全国平均との開きが見られました。算数では、「基礎となる力」については、学年によって全国平均との差にばらつきが見られ、「活用する力」については、全ての学年が全国平均との間に開きが見られました。これは、これまでと同様の課題です。教科別の結果および分析は次のとおりです。

小学校 国語の考察
 国語では、「基礎となる力」に比べて「活用する力」に課題が見られました。「活用する力」の問題内容を見ると、「メモをもとに文章を書く(2年)」「折り紙の折り方を説明する(3年)」「調べたことを文章にまとめる(4年)」「かるたの読み札について話し合う(5年)」などの問題が出題されています。これらの問題は、生活の中のさまざまな分野において「話す・聞く力」「読む力」「書く力」などの基礎・基本の力を活用して、問題を解決していく内容になっています。情報と情報との関係を正確に読み取り、相手に伝わるように自分の考えを表現する力が必要となってきます。
 国語は、全ての学習の基礎となる教科です。各学校では引き続き、読書の推進など言語環境を整え、言語活動の充実を図っていきたいと考えております。併せて、さまざまな機会を捉え、自分の考えを文章に書いてまとめ、表現する場を設定することで、「活用する力」を身に付けさせていきたいと考えております。
 各家庭においても、読書を楽しむ時間を設けたり、日常の何気ない会話を楽しんだりすることも、「活用する力」の向上につながりますので、お子さんと一緒に、取り組んでみてはいかがでしょうか。

小学校 算数の考察
 算数でも、「基礎となる力」に比べて「活用する力」に課題が見られました。「活用する力」の内容としては、「10000までの数・分数(3年)」「はこの形(3年)」「大きい数・小数・分数(4年)」「わり算(4年)」「簡単な場合についての割合(5年)」「億と兆・がい数の表し方(5年)」で、正答率が全国平均を大きく下回りました。「数の概念(位取り)」や「乗法(かけ算)・除法(わり算)」等の学習で身に付けた基礎的な知識・技能を使って、日常生活のさまざまな問題を解決していくことを苦手としている児童が多く見られたと考えられます。
 これらの課題に対応していくために、日常の生活の中で算数を活用するよさに気付かせ活用することへの関心・意欲を高めていくとともに、普段の授業の中で児童自身が説明する場面を設けたり、思考力・表現力が求められる問題に取り組ませたりすることで、思考力・判断力・表現力の育成に努めていきたいと考えております。
 また、算数科は他教科に比べ内容の系統性や連続性が強く、学年が上がるに連れて理解や習熟の程度の差が大きくなる傾向が見られます。そのため、基礎・基本の内容を習熟する時間を設定したり、家庭学習の習慣化を図ったりするとともに、個に応じた学習方法の工夫を行い、学習内容の理解と定着を確実なものにしていけるよう指導していきます。

町立小学校5校の学力向上への取り組み
小学校共通

●電子黒板やインターネット等、ICT(情報通信技術)を活用した授業の推進
●早期英語教育「ざおう英語活動」の実施(英語専科、ALT、学級担任の複数体制での授業の実施)
●朝の時間を利用した読書の実施
●図書ボランティアによる読み聞かせや、学校図書支援員による読書環境の整備
●学習支援員、特別教育支援員との連携による学習支援
●ございん学習室の活用
●体験学習を重視した学習活動
●教育相談の実施による保護者との連携強化
●家庭学習の習慣化(町教育委員会作成の家庭学習の手引きや、家庭学習カードの使用、ノーゲームデーの設定)

円田小学校

●算数科校内研究「主体的に学び続ける児童の育成」
●学習習慣の定着(「家庭学習の手引き」や「学習スキル」の活用、学年に応じたノート指導)
●基礎・基本の徹底や思考力向上を目指した「ドリルタイム」の実施
●既習事項確認のための「算数コーナー」やICTの積極的な活用による「分かる授業作り」の推進

平沢小学校

●国語科校内研究「豊かな読みができる児童の育成」
●「ふりかえりコーナー」による既習事項、学習のまとめの掲示の工夫(各教室内)
●学習の基礎、基本の定着のための、放課後の学習時間「だるまんタイム」の活用
●集会活動等における、児童からの主体的な意見、感想発表の設定

永野小学校

●教員の指導力向上(校内研究「豊かな生活づくりに主体的に取り組む児童の育成(金銭教育)」)
●学習習慣の定着(「永野小スタンダード」の活用)
●学びのコーナーの設置(教室外に手本となる児童のノートを掲示)
●ざおうさまタイムの活用(朝の時間を利用し、各学級の実態に応じて内容を工夫)

宮小学校

●算数科校内研究「分かる楽しさやできる喜びを実感しながら学ぶ児童の育成」
●児童が自分の考えを交流させる学び合いの場の設定
●学習の基礎・基本の定着に向けた学習の時間「学びの時間」の活用
●「宮小よい子の学習ルール」の徹底(あいさつ、学習準備、発表等の学習習慣の定着)

遠刈田小学校

●算数科校内研究「学ぶ楽しさを感じ、進んで学習に取り組む子供の育成」
●読書活動の推進(図書コーナーの設置や読書週間の実施)
●基礎・基本の時間の充実(既習事項の定着を目指した朝のパワーアップタイムの実施)
●書く活動の日常化(行事のめあてや振り返りの記入、授業感想等)



中学校の現状と課題
 1年生の平均正答率については、数学において全国平均正答率を上回る結果となりました。一昨年に行った小学5年次の結果と比較すると、課題であった算数(数学)の「基礎となる力」・「活用する力」共に、大きく改善しています。また、国語も向上し、全国平均正答率に近い結果となりました。一方、社会・理科においては、全国平均正答率を下回る結果となりました。特に、社会では「基礎となる力」に課題が見られました。
 2年生の平均正答率は5教科全てにおいて、全国平均正答率に近い結果となりました。特に、理科の「活用する力」では、全国平均正答率を上回っています。しかし、傾向を分析した結果、社会・数学・英語において「表現力」に課題が見られました。社会や数学では、資料から情報を読み取り、根拠をもとに自分の考えをまとめ表現することに課題があります。また、英語では、「読むこと」「書くこと」に課題が見られました。
 これらのことを踏まえ、1年生では、社会・理科の基本的な事項を身に付けさせるために、振り返りプリントや小テスト等の取り組みを実施するなど、基礎・基本の定着を図る指導を行っていきます。
 2年生では、授業の中で「自分の考えをまとめること」や「考えを伝え合うこと」を行う場面を設定し、より良い考えを導いたり、考えを広げたり、深めたりする学習を積極的に行いたいと思います。英語に関しては、小学校での外国語活動や外国語の学習によって身に付けた表現や中学校で新たに学んだ表現を英語で正しく書くことができるよう「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」のバランスに留意しながら指導していきます。
 さらに、全学年の数学や英語では、ティームティーチングによる指導や少人数指導を効果的に取り入れ、個に応じた学習支援を行います。そして、全ての教科でICT等を活用した「分かる授業」づくりにも取り組みます。
 家庭学習では、小学校で身に付けた学習習慣を継続させ、授業の予習・復習、各教科の宿題に取り組ませています。各校とも帰りの会に設定された学習時間や家庭学習ノートを活用し、生徒一人一人に合った家庭学習の内容や方法を指導・助言してまいります。ご家庭でも励まし、声掛け等をよろしくお願いします。


町立中学校3校の学力向上への取り組み
中学校共通

●電子黒板やインターネット等、ICT(情報通信技術)を活用した授業の推進
●数学科、英語科におけるTT(ティーム・ティーチング)指導および個別支援
●英語検定の実施(中学3年生の受検料免除、年1回)
●学校だよりや学年だより等での学習意欲の喚起
●学校図書支援員による教科学習に役立つ図書環境の整備
●毎日の朝読書の実施
●漢字検定の実施
●支援を必要とする生徒への特別教育支援員の配置
●町教育委員会が作成した「家庭学習の手引き」の活用
●長期休業中における自主学習教室の開放と学習支援
●週1回のノースマホ・ノーゲームデーの設定

円田中学校

●宮城県教育委員会「学力向上に向けた5つの提言」に基づいた協働による授業づくりの推進
●対話的な学びを取り入れた授業づくりと授業力向上に向けた研究授業の実践
●円中リピートタイム(プリント学習)の実施(毎日帰りの会前)
●担任を中心とした学年担当による自主学習のチェックと学習方法のアドバイス

宮中学校

●授業づくり強化期間(年間3回)中に全教員が1回の研究授業
●ペアやグループによる学び合いの場面を組み入れた授業づくり
●Q-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート)による生徒の実態把握および生徒支援
●家庭学習定着に向けた、学習委員会による、家庭学習ノート提出の呼び掛けと担任の点検指導
●放課後学習会の開設(ステップアップ教室、数学と英語)

遠刈田中学校

●主体的な学びに向かうための導入の工夫を重視した授業改善、授業力向上のための校内研修
●授業づくり強化週間(年間2回)中に管理職を含む全教員が1回以上の研究授業実施
●帰りの会後10分間のミニ学習会で基礎・基本の定着と家庭学習の意欲喚起
●学校環境適応感尺度「アセス」による生徒の実態把握、生徒支援と学習集団作り



重点的に指導し、育成を図る力
国 語

●意見をもとに、伝えたいことを明確にしてレポート等を作成する力(2年)
●目的に応じて、自分の考えが伝わるように工夫して作文する力(1年)

社 会

●「我が国の歴史」に関する知識・理解(1年)
●「世界の諸地域」に関する知識・理解
●グラフや図などの資料をもとに考察し、判断する力(2年)

数 学

●百分率(パーセント)等の割合を求める力(1年)
●具体的な事象を理解し、立式したり説明したりする力(1、2年)
●「関数」を理解し立式する力(1、2年)
●資料からデータを読み取る力(1、2年)

理 科

●「大地のつくりと変化」「月と太陽」「電気の利用」「てこのはたらき」に関する科学的な思考および基本的な知識(1年)
●「身のまわりの物質とその性質」に関する科学的な思考および基本的な知識(2年)

英 語

●語彙の知識や動詞の変化の理解
●単語等や3文程度の英作文を書く力
●語順に留意し、正しく表現する力(2年)

 

家庭でもできること

生活アンケートから
 町内小学校5・6年生(156名)と中学校3年生(80名)を対象に、今年度の6月に「生活に関するアンケート」を行いました

@「学習時間の現状」
 小学生では、1時間以上学習している割合が61%、さらに1時間半以上学習している割合が21%と前回よりも学習時間が増加しています。中学生は、2時間以上学習している割合が9%と前回から10%も減少しています。
 学習時間の確保については、「家庭学習の手引き」を活用しながら、学校と家庭が連携して取り組んでいくことが効果を上げると考えられます。

A「ゲーム等の使用時間とテレビ視聴時間について」
 小学生では、「テレビ視聴率」の結果を見ると、2時間以上視聴する割合が36%と前回とほぼ同じ割合でした。また、「ゲーム・インターネット・携帯メール等を使用する時間」の結果を見ると、ゲーム等を平日2時間以上使用している割合が30%とこれも前回とほぼ変わっていませんでした。それに対して、中学生は前回より、2時間以上使用している割合が51%と17%増加していました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、家庭で過ごす時間が多くなってきたことや情報通信機器の普及に伴い、オンラインゲームやSNSなどの利用の拡大が主な原因と考えられます。
 学校でも、引き続き安全な使い方について指導していきます。ぜひ家庭でも発達段階に合ったルールを決め、安全かつ適切に使用できるように働き掛けてください。

B「起床時間の好調維持」
 小学生で7時より前に起床する割合が82%であり、ここ数年80%台を維持しています。また、中学生も7時までに起床している割合が、75%と前回よりも15%も増加しています。
 小・中学生共に「早寝・早起き」の習慣が身に付いていると考えられます。
 望ましい生活習慣は、小・中学生の成長著しいこの時期に、身体、体力面はもとより、学力面においても大変大きな影響を及ぼします。国・県が力を入れている「早寝・早起き・朝ごはん」運動にも、家庭と学校が連携しながら、意欲的に取り組んでいきます。


問い合わせ先/各小中学校または、町教育委員会教育総務課 TEL33−3008

 

ページの先頭へ