健康一口メモNo299
「全身麻痺とタバコ」

公立刈田綜合病院　副院長　長谷川　淳一　先生

　先月号の健康一口メモで、刈田病院の小泉先生がCOPD（閉塞性肺疾患）のお話をされていました。これは主にタバコによるものですが、タバコは身体全体（心臓、脳、肺、免疫など）に影響を及ぼし、全身麻酔の際にも大きな障害となります。
　喫煙をすると、身体の隅々に酸素をうまく運べなくなり、低酸素の状態となります。低酸素状態になると血液がドロドロになりますので、血栓症の発生も高くなり、血管が収縮することによって血圧が上がり、脳や心臓に負担がかかります。気管支が弱くなって咳や痰が増えますし、長い間喫煙を続ければCOPDという肺の組織が破壊されてしまう病気となります。免疫細胞の働きも抑制されるので、感染症の危険が高まります。
　全身麻酔を行うと、麻酔薬の作用で呼吸が弱くなってしまいますので人工呼吸が必要な状態となりますが、喫煙をしている患者さんの場合は咳や痰が異常に増え、酸素を取り込んで身体の隅々まで酸素を運搬する能力が落ちてしまうのです。脳梗塞や心筋梗塞、手術後肺炎の発生率も高くなります。
　全身麻酔を受ける場合には、4週間の禁煙をすればこのような悪影響を30％ほど減らすことができると言われています。もちろん、今から禁煙することが理想的であることは言うまでもありません。

休日当番医（内科・外科・歯科）　 5月3日〜6月7日